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高田活版

 

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澤さんがつづる「陸前高田の歴史」


2014/10/19

市制施行の陳情(昭和29年8月)

Tweet ThisSend to Facebook | by 澤正宗
《陳情書》
高田町、気仙町、広田町、小友村、米崎村、矢作村、竹駒村及び横田村の町村を合併し、市制施行の実現方について特段の御高配を賜わりたく陳情いたします。

《理由》
高田町、気仙町、広田町、小友村、米崎村、矢作村、竹駒村及び横田村の八カ町村は、往時より郡南と呼びならされ、気仙郡南部氷上山麓に連なる気仙川筋と太平洋岸とにわたり、広袤(註:面積)二百二十四平方粁(キロメートル)、現在人口三万三千五百四十五人を擁し、農林・水産・商工業が渾然一体となり、相互発展の基礎を成す政治、経済、文化の一大ブロックを形成しております。
 しかも気候は四季温和にして生活に適し、農地は肥沃であり、海岸地帯は漁業生産に富み、後方山林地帯には林産物の蓄積が極めて多く、加うるに近時果樹・園芸・酪農その他換金作物の耕作が盛んになり、土地改良事業の勃興、地下資源の開発、漁港の修築等に、地方住民は孜々として郷土開発のため渾身の努力を続けており、従ってその成果は活目して見るべきものがあります。さらに当地方は、教育機関、民生施設が備わり、国有鉄道大船渡線が沿岸地帯を横過し、国県道と相まって町村道は四通八達して町村間の連絡を密にし、人事物資の交流が繁く、しかも住民は勤勉にして進取の気性に富む反面、敦厚にして近隣融和の実を挙げておりますのみならず、当地方は三陸海岸の関門に当たり、海陸を問わず幾多景勝に富み、四時探勝の客跡を絶たず、好適なる観光地として充分なる資格を備えております。
 されば八カ町村を合併し、経費の効率的使用と諸施設の統合整備とにより、自治能力と規模を合理化し、自治体の基礎を強化し、農林水産資源並び地下資源を開発し、これを基盤とした商工業の発展を図り、もって住民の福祉増進を期せんとするの議が、つとに住民の声として唱えられておりましたが、近時、北上地域開発特定地域の一環として政府の指定を受けたのみならず、町村合併促進法公布に次いで、県もまた本年度に入り合併試案を発表して、当八カ町村の合併を慫慂(註:しきりに勧める)されておりますが、さらにまた当地方は、都市計画法により主務大臣よりの指定に基づき、都市計画事業施行の第一歩を踏み出すこととなりました。
 ここにおいて当地方においても、数次にわたる関係町村間の協議研究を経て、政府の方針に副い、また多年宿望たる強力なる地方自治体を確立せんがため、好機会を逸せず八カ町村大同団結して市制を施行せんことを決意し、今や着々としてその準備を進めている次第であります。
 何卒事情御洞察の上、一大躍進を遂げんとする地方住民の熱望する市制施行について、御理解ある御協力と御高配を衷心よりお願いいたしたく、ここに当地方の現有勢力を摘録し陳情する次第であります。

 昭和二十九年八月
22:00